コラム
5.12025
遺留分・遺言書保管制度について

遺言書作成時の遺留分について
遺言書はご自身の意思を反映できる重要な手段ですが、相続人の「遺留分」を侵害してしまうと、後々のトラブルの原因になります。
遺留分とは
遺留分とは、一定の法定相続人に対して法律上保障されている最低限の相続割合のことです。これにより、遺言で全財産を第三者に譲渡しても、相続人が最低限の取り分を主張できる制度となっています。
- ・遺留分を持つ相続人:配偶者、子(またはその代襲者)、直系尊属(子がいない場合)
- ※兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合
- ・配偶者や子がいる場合:法定相続分の1/2
- ・直系尊属のみが相続人の場合:法定相続分の1/3
たとえば、子が1人しかいない状態で「すべての財産を第三者に相続させる」とした場合、その子は「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
遺留分を巡るトラブルを避けるには
- ・遺留分に配慮した内容の遺言書を作成する
- ・配分に偏りがある場合は、理由を明記して納得を得る
- ・相続人に遺留分の放棄を事前にしてもらう(※家庭裁判所の許可が必要)
- ・専門家に相談し、法的リスクを軽減する
遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要
遺留分を放棄するには、事前に家庭裁判所で正式な手続きが必要です。遺言書の作成時に「放棄してくれるだろう」と思い込んで作成すると、後々のトラブルにつながる可能性があります。
まとめ
遺言書を作成する際には、遺留分について正確に理解し、適切に対処することが重要です。大切なご家族との関係を損なわないためにも、専門家のサポートを受けながら、慎重に遺言内容を検討しましょう。
法務局での遺言書保管制度について
2020年7月より、「自筆証書遺言書保管制度」が全国の法務局で開始されました。これは、自筆証書遺言を法務局が保管してくれる新たな制度であり、従来の課題であった「紛失」「改ざん」「家庭裁判所での検認手続き」などのリスクを減らすことができます。
制度を利用するメリット
- ・家庭裁判所での検認が不要になる
- ・法務局が原本と画像データで安全に保管してくれる
- ・保管時に形式の不備をチェックしてくれる
- ・相続人が遺言の存在を確認しやすくなる
保管手続きの流れ
1.自筆証書遺言の作成
遺言者本人が、自書により遺言書を作成します。パソコンで作成したものは対象外となるため注意が必要です。
2.法務局へ事前予約
遺言者本人が法務局に予約を入れ、来庁日時を決定します。原則、代理人による申請はできません。
3.法務局での保管申請
指定日に法務局を訪問し、本人確認書類(運転免許証など)を提示のうえ、保管申請を行います。手数料は3,900円(収入印紙)です。
4.保管証の受領
遺言書の保管が完了すると、「保管証」が交付されます。この保管証は、遺言者が後に撤回や内容変更をする際にも必要となる大切な書類です。
制度利用時の注意点
- ・遺言の内容まではチェックされない(文言の妥当性など)
- ・形式が整っていないと保管できない
- ・撤回や変更も本人が手続きする必要あり
公正証書遺言と遺言書保管制度の違い
比較項目 | 公正証書遺言 | 自筆証書遺言書保管制度 |
---|---|---|
作成方法 | 公証人が関与し、本人が口述 | 本人が全文自筆(財産目録はPC可) |
費用 | 数万円〜(財産額に応じて変動) | 保管手数料:3,900円 |
証人の有無 | 2名以上必要 | 不要 |
紛失・改ざん防止 | 公証役場に原本保管 | 法務局が原本保管 |
家庭裁判所の検認 | 不要 | 保管制度を利用すれば不要 |
手続きの確実性 | 高い(形式不備の心配なし) | 書き方に不備があると無効のおそれ |
秘密保持 | 内容を証人・公証人が把握 | 本人以外は原則内容を確認できない |
まとめ
遺言書保管制度の利用は、費用を抑えて遺言を残したい方や、秘密を保ちたい方には向いています。しかし、法務局では遺言書の記載方法などを相談することはできません。内容のチェックもれないため、書き方に不備があると無効となってしまうリスクがあります。
そのため、弊所では公正証書で作成することをおすすめしています。公証人の関与があるため、形式不備で遺言が無効になるリスクはほぼありません。また、公証役場に原本が保管されるので、紛失や改ざんの心配もありません。費用はかかりますが、その分確実性と安心感が得られます。
どちらを選ぶかは、「費用よりも安全性を重視するか」「秘密性や手軽さを求めるか」によって変わります。いずれの場合も、遺言が無効とならないよう、専門家のサポートを受けながら作成することが大切です。